形成外科とは

形成外科のイメージイラスト

形成外科は、外傷や外傷後の変形、腫瘍手術後の変形、表在性先天異常などの治療を専門的に行う診療科です。
皮膚などに異常や変形が生じると、日常生活に支障をきたしたり、生活の質(QOL)が低下したりします。そのようなときに、外科的な手技を用いて本来の形態に近づけるための治療を行ないます。外傷などで後天的に皮膚の傷跡が出来てしまったケースだけでなく、生まれつきの奇形についても形成外科の守備範囲となります。

形成外科で扱う主な疾患

ほくろ

一般的にほくろと呼ばれるものは、正式には色素性母斑とか、母斑細胞母斑と言われるものです。これは、メラニン色素を作成するメラノサイト(細胞)が変化することで発生するとされる良性腫瘍です。色素性母斑には、生まれついてほくろがある先天性と、生後に発生する後天性があります。多くは後者がよく見受けられます。

先天性の色素性母斑であれば、直径1.5cm以下のものをほくろ(小型色素母斑)、直径1.5cm以上20cm以下であれば黒アザ(中型色素母斑)、直径20cm以上であれば巨大型色素性母斑と分類されます。この場合、成長と共に大きくなっていくのですが、中型や巨大型の場合は悪性化すること(悪性黒色腫 など)がありますので、そのリスクが高いと判断されると外科的切除による手術療法が行われます。また、小型あるいは中型のケースで悪性化のリスクが低いとなれば、基本は放置でもかまいませんが、美容的な観点から除去したいという場合は、保険適用はされず全額自己負担となります。なお治療内容については、炭酸ガスレーザーによる除去か、外科的切除になります。

また後天性色素性母斑は、生後に発生するほくろのことになります。先天性のように巨大化することはありませんが、急激に大きくなった(直径が6mmを超える)、色ムラがある、形が非対称、潰瘍がみられるという場合は、悪性黒色腫(メラノーマ)の可能性もあります。悪性腫瘍が疑われる場合は、ダーモスコピー(拡大鏡)や一部の組織を採取して顕微鏡で調べる病理検査をして、診断をつけるようにします。切除が必要となった場合は、外科的切除によって病変を取りきっていきます。

おできやできもの

おでき

おできは、毛包炎や癤(せつ)のことで、主に細菌(黄色ブドウ球菌 など)が毛穴に侵入し、毛漏斗部(毛穴の入口)で炎症が起きている状態を毛包炎、さらに症状が進行し、毛包の奥まで炎症が及んでいる状態を癤、さらに周囲の毛包にまで炎症が進んだ状態を癰(よう)と言います。単発(ひとつの毛穴のみ)で発症することもあれば、多発することもあります。ちなみに、にきびも毛包炎の一種です。

主な症状ですが、細菌に感染している毛穴に膿疱や膿栓、周囲に紅斑や腫れがみられるようになります。また毛包炎では軽度な痛みも、癤では痛みがはっきりみられるほか、熱感や全身の倦怠感なども現れるようになります。顔、首、胸、お尻といった部位で発症しやすいと言われています。発症の原因については、毛穴付近の小さな傷、カミソリ負け、多汗、摩擦といったことが挙げられます。

治療に関してですが、毛包炎であれば、抗菌薬の外用薬の塗布か、症状が軽度であれば自然に治癒するのを待ちます。癤もしくは癰の場合は、抗菌薬の内服のほか、膿瘍がみられる場合は切開して排膿していきます。

できもの

できものは、皮膚や皮下に発生している腫瘍やしこりのことを言います。部位は限定されず、体のあらゆる部分が対象となります。良性腫瘍に限定すると、粉瘤(アテローム)、脂肪種、汗管腫、稗粒腫などがあります。

粉瘤とは

アテロームとも呼ばれるもので、これは皮下(毛漏斗部)に袋状の構造物が何らかの原因で発生し、その中に角質や皮脂が混入するなどして、のう腫になっている状態です。

粉瘤の見た目は、皮膚の色と同じで、多くは直径1~2cm程度の半球状の腫瘤です(場合によっては10cm以上になることもあります)。また中央部に黒点があるのも特徴なほか、粉瘤の箇所を指などで強く圧迫するとドロドロした粥状の物質がみられるようになります。痛みなどの自覚症状はありませんが、細菌に感染して炎症を起こすなどすると、(粉瘤の)表面は赤くって、腫れや痛みがみられるほか、膿が溜まるようにもなります。なお発症しやすい部位は、顔、首、体幹部分です。

治療に関してですが、炎症性粉瘤が起きている場合は、膿を切開して取り除き、抗菌薬を使用していきます。基本的には、良性腫瘍なので放置でもかまいませんが、粉瘤が大きくなる、あるいは炎症を起こす可能性はあるので、目立つようになってきたら切除することをお勧めします。この場合、のう腫ごと取り除く外科的切除や患部(粉瘤)をパンチで孔を開け、そこから内容物や袋の壁を取り出していく、くり抜き法を行っていきます。

脂肪種

良性腫瘍のひとつで、脂肪組織が増殖することで発生します。皮下腫瘍の中では、最も起きやすいとされ、40~50代の女性や肥満の方によくみられると言われています。発生しやすい部位としては、背中、お尻、太もも、肩、首、腕などです。皮膚と同色で、大きさは直径にして1~10cm程度と様々で、単発なこともあれば、多発することもあります。中身は脂肪のかたまりで、痛みなどの自覚症状はなく、患部に触れると柔らかいしこりが感じられます。

基本的には良性腫瘍なので、直ちに治療を要することはありませんが、だんだん大きくなることもあるほか、自然に消えることもないです。そのため、小さくて気にならない場合は経過観察で問題ありませんが、見た目が気になる、違和感があるという場合は外科的治療による摘出となります。なお一度、取り除いてしまえば再発することはありません。

悪性腫瘍(皮膚・皮下)

皮膚や皮下で発症する悪性腫瘍は、総称して皮膚がんとも言います。代表的なものとしては、悪性黒色腫(メラノーマ)、有棘細胞がん、基底細胞がんなどがあります。皮膚がんの多くは、初期症状は良性腫瘍(ほくろ など)と見分けがつきにくいので病状を進行させやすくなります。ただ、よく見ると、色や形、大きさなどに変化がみられるようになります。異常に気づいたら早めにご受診ください。

悪性黒色腫は、メラノサイト(メラニンを生成する細胞)が腫瘍化し、増殖したものです。紫外線や機械的な刺激がきっかけとなって、がん化するというもので、ほくろのような見た目で、気づきにくいというのがあります。ただメラノーマには、よくよく見ると左右が非対称、色ムラ(濃淡)がある、潰瘍がみられる、ここ1~2年でだんだん大きくなっているということがあります。さらに見た目や特徴などから4つのタイプ(末端黒子型、表在拡大型、結節型、悪性黒子型)に分類されます。

また皮膚というのは表皮、真皮、皮下組織の三層で構成されており、さらに表皮をみると、一番外側から角質層、顆粒層、有棘層、基底層といった層で構成されています。この有棘層に存在する細胞が、がん化すると有棘細胞がんと診断されます。発症の原因としては、長期間に渡って紫外線を浴びている、放射線治療の影響、かつての熱傷(やけど)や外傷による瘢痕といったことが挙げられます。主な症状ですが、皮膚表面がカサカサする、鱗屑やかさぶたと共に形が整っていない紅色の結節(カリフラワー状)がみられるほか、細菌によって二次感染を引き起こすと悪臭を引き起こすこともあります。高齢者に発症しやすく、主に顔面や腕など日の光が当たりやすいとされる露光部で起きやすいとされています。

基底細胞がんは、頻度が最も高いとされる皮膚がんですが、これは基底層にある基底細胞が必ずしもがん化するわけではないのですが、基底細胞付近のよく似た腫瘍細胞から発症することから、このような病名になっています。中年よりも上の世代に発症しやすく、長期的に紫外線を浴びることが主な発症要因とされ、顔面(なかでも鼻の付近)に発生しやすく、大半の患者様にほくろのような黒あるいは黒褐色の結節がみられ、その中心は潰瘍化していることが多いです(結節潰瘍型)。このほか基底細胞がんの病型としては、表在型、斑状強皮症型、ピンカス型もあります。

治療について

皮膚がんが疑われる場合、拡大鏡(ダーモスコープ)などを使用し、病変などを確認します。さらに病変の一部もしくは全部を切除し、その皮膚組織を顕微鏡で調べる皮膚生検を行うなどして診断をつけていきます。

検査の結果、皮膚がんと診断された場合は、手術療法による外科的切除が中心となります。なお切除する場合は、できるだけ広範囲に取るようにしていきます。なお医師が必要と判断すれば、放射線療法や化学療法も行っていきます。

目立つ傷跡やケロイド

傷跡や手術の傷が目立つという場合は、肥厚性瘢痕やケロイドが考えられます。これは主に外傷、やけど(熱傷)、手術創などによって皮膚が欠損し、その傷が治癒していく過程において、皮膚の再生がうまくいかず、具体的には、膠原繊維が過剰に産生するなどして傷の部分が盛り上がるなど皮膚病変がみられている状態を言います。傷などをきっかけに多くは1ヵ月以内に発症し、胸部、肩、腹部、上背部、耳たぶなど、皮膚が動きやすい部位で発症しやすいと言われていますが、人種や体質も発症に関係すると言われています。

肥厚性瘢痕は、傷があった部分に限定して、皮膚は赤みを帯び、そして隆起するようになります。主な症状として、チクチクしたかゆみや痛みがみられます。また、この場合の瘢痕については、数年が経過することで皮膚にみられていた赤みや肥厚といったものは、軽減していくようになります。

一方のケロイドは、元々の傷の範囲を超えて、周囲の皮膚にも赤みや盛り上がりが増大している状態です。この場合は、強いかゆみや痛みもみられるようになるほか、自然と治るということもありません。

治療について

炎症など対症療法の治療としては、ステロイドの局所注射、トラニラストの内服薬、ステロイドの外用薬などを使用していきます。

また瘢痕によって、拘縮が見られるという場合は手術療法となります。肥厚性瘢痕であれば、瘢痕(盛り上がっている部分)の切除と皮弁形成術によって解消していきます。ケロイドの場合も盛り上がっている部分を切除しますが、これだけだと再発する可能性が高いので、放射線照射治療(若年者には行わない)も行って、その可能性を低くしていきます。

陥入爪や巻き爪

爪が異常をきたしている状態で、主に爪の両端が何らかの原因で内側に巻かれた状態になっているのが巻き爪です。さらにこの爪が皮膚に食い込んでしまい、患部に炎症や腫れなどの症状が現れている状態を陥入爪と言い、この場合は強い痛みなどがみられるようになります。

発症の原因としては、サイズの合わない靴を履く、激しくスポーツをして足に負担をかける、開帳足、足の爪の水虫などが挙げられ、足の親指で発症することが大半です。。

治療に関してですが、炎症や腫れ、痛みといった対症療法については、ステロイドの外用薬や抗菌薬を服用するなどしていきます。また陥入爪(巻き爪)そのものを治す治療については、保険診療と保険適用外の自由診療があります。保険適用では、巻き爪を引き起こす両端の爪を生えないように薬品を塗布していくフェノール法があります。自由診療では、ワイヤーを爪に引っ掛け、爪が内側に巻こうとする力を利用して爪をどんどん外側に向け矯正させていくVHO法などがあります。またサイズの合う靴を履く、爪水虫が原因なら疾患を治すといった対策も必要です。

眼瞼下垂

眼瞼とは、一般的にまぶたと呼ばれるものですが、上まぶた(上眼瞼)が何らかの原因で垂れ下がってきてしまい、目が開けにくい、視界が狭い、見えにくいなどの状態にあることを眼瞼下垂と言います。上まぶたは、上眼瞼挙筋が収縮し、瞼板が持ち上がることで目が開くようになるわけですが、上眼瞼挙筋や動眼神経に何らかの異常が起きることで眼瞼下垂を発症するようになります。同疾患は、先天性(生まれつき)と後天性に分けられます。

先天性眼瞼下垂は、主に先天的に眼瞼挙筋の形成や発達に異常がみられることで起きるのですが、片眼と両眼のケースがあります。また後天性眼瞼下垂は、加齢による眼瞼挙筋腱膜のゆるみ、コンタクトレンズの装用による影響、まぶたに関係する神経や筋肉の病気(重症筋無力症 など)といったことが挙げられます。このほか、脳梗塞や脳腫瘍、脳動脈瘤の発症によって、動眼神経が麻痺し、それによって眼瞼麻酔を引き起こすこともあります。

ちなみに眼瞼下垂によって眼が開きにくくなると、おでこなど他の筋肉を使って持ち上げるようになるので、頭痛や肩こりといった症状もみられるなど、目が見えにくい以外にも、日常生活に様々な影響を及ぼすようになります。このような状態になると手術療法による治療が検討されます。

手術療法に関してですが、先天性眼瞼下垂の場合、小児期で気づくことが大半です。ただ、弱視などの影響がなければ、ある程度成長してから手術するということになります。眼瞼下垂の原因が、加齢やコンタクトレンズの装用などによる眼瞼挙筋腱膜の伸展ということであれば、皮膚を切開して眼瞼挙筋を短くし、瞼板に縫い合わせていく、眼瞼挙筋短縮術を行います。この場合、局所麻酔下で行いますので、日帰り手術が可能です。手術時間は、片眼で20分程度です。また皮膚の垂れ下がりもみられていれば、たるんだ皮の部分も切除していきます。

わきが

わきがというのは、主に脇から不快の臭いを放つ症状のことを言います。これは病気ではなく、アポクリン汗腺の働きが活発な人に起きやすいと言われています。ただアポクリン汗腺から分泌される汗から臭いが出るというわけではありませんが、これがたくさん分泌されるようになると皮膚の常在菌の増殖を促し、分解が進むと強烈な臭いを発するようになります。

わきがは人種によって、出やすい体質というのもありますが、黄色人種では少ないと言われています。そのため、日本では目立ちやすいということもあります。したがって、気にする方は多いです。原因としては、遺伝的なことが大半なので、深刻に悩む必要はありませんが、気になる場合は、腋毛を処理する、皮膚表面の細菌を減らすために殺菌石鹸、除菌スプレーを使用するなどして、対策をとるようにしてください。

なお、どうしても(わきがが)気になって仕方がないという場合は、手術療法ということもあります。その場合は、腋の下にあるアポクリン汗腺を切除するという切開法(剪除法)が効果的で、これは一般的によく行われる治療法でもあります。ただ皮膚を切開しますので、傷跡が目立ってしまうこともあります。なお同手術は局所麻酔下による日帰りとなります。手術時間は1時間ほどで、術後2週間程度は腫れが残ることもあります。

傷の縫合

創傷(切り傷 など)や手術創によって開いた傷口を縫い合わせる処置のことを縫合処置と言います。この処置というのは、傷が深い場合は出血を止めるために行われますが、それ以外にも創感染を防ぐといった目的などもあります。

縫合をする際は針を使用しますので局所麻酔を使用していきます。また、できるだけ傷跡を目立ちにくくするために吸収性の糸による真皮縫合とナイロン糸による表皮縫合を行っていきます。処置後は、テーピングでアフターケアもしていき、縫合による傷跡をできるだけ目立たないようにしていきます。ちなみに抜糸は必要ですが、ナイロン糸というのは、その材質が皮膚に癒着しにくいものなので、痛みを感じることなく抜くことができます。

あざ(血管腫などの赤いあざや太田母斑などの黒いあざ)

あざとは

あざは、遺伝的な要因などが原因となって発生する色素斑のことです。皮膚とは違う色をしていることから、その見た目から赤あざ、茶あざ、青あざなどと呼ばれることもあります。ここでは代表的なあざを説明いたします。

赤あざ(単純性血管腫)

先天的な毛細血管の異常が原因とされ、血管腫という名前がついていますが、血管異常なので奇形に分類されます。生後間もない時期から現れ、境界が明瞭な平坦で赤色の斑がみられますが、自然に消えるということはありません。発症しやすい部位は頭頚部です。放置が続くと色調が濃くなっていき、成人になる頃には赤あざの部分が盛り上がることがあります。

治療をする場合は、血色素を対象としたレーザー療法(色素レーザー)を行っていきます。これは対象部位に同レーザーを照射していくもので、早ければ早いほど皮膚の回復が早くなるとは言われますが、生後3か月くらいから積極的に行っていきます。成長につれて皮膚も厚くなり血管腫も深くなる傾向にあります。(自然消退するケースもあります)

茶あざ(扁平母斑)

薄い茶色の真っ平な色素斑(大きさは数mm~数cm程度)が頬など顔の部位にみられ、生後1歳くらいまでに発生すると言われていますが、思春期になってから現れるケースもあります。これは、表皮の部分にメラニン色素が多くなることで茶色(カフェオレ色)に見えるようになると言われています。放置のままでは自然に消えることはなく、斑の数は多くとも4個程度と言われ、多発している場合は神経線維腫症1型が疑われます。

悪性化することはないので放置でもかまいません。ただ多くの場合、見た目を気にして治療をするようになります。その場合、レーザー治療などを用いますが、1回ですべてが消えるわけではないので、何回か通院することになります。また、しばらくすると再発するということもあります。

青あざ(太田母斑)

太田母斑は、どちらか片側の目の周囲や頬(三叉神経第一枝もしくは第二枝の領域)を中心に発生する青もしくは褐色のあざ(母斑)や斑点のことを言います。黄色人種の女性(男性の4~5倍)にみられやすいとされ、生後間もなく発症することもあれば、思春期前後、あるいは成人(主に妊娠・出産期)になってから発症することもあります。原因としては、メラニン色素の異常によって起きるとされていますが、詳細に関してはわかっていません。

主な症状ですが、見た目以外で何か問題が起きるということはありません。ただ自然に消えるということはないので、見た目が気になる場合は治療ということになります。この場合もQスイッチ付きルビーレーザーやQスイッチ付きアレキサンドライトレーザー 、ピコレーザーといったレーザー療法となります。ただ1回の施術で解消するということはないので、一定の間隔でレーザー治療を受けに通院する必要があります。

やけど

高温の物質に一定時間触れてしまうことで、皮膚組織(皮膚、粘膜)が損傷を受けている状態を熱傷と言い、一般的にはやけどと呼ばれています。主な症状としては、皮膚が赤くなる、水ぶくれ(水疱)、ヒリヒリした痛みといったものがみられるようになりますが、やけどをした直後というのは、速やかに患部を水で冷やすようにしてください。水道水で患部を洗い流すような形で冷やし続けます(最低でも30分程度)。その後、症状がある程度落ち着いたら速やかに医療機関をご受診されるようにしてください。

やけどに関しては、症状の程度によってⅠ~Ⅲ度に分類されます。Ⅰ度熱傷は表皮のみが損傷している軽度なやけどですが、発赤や腫れのほか、ヒリヒリした痛みなどがみられます。またⅡ度熱傷は真皮にまで達しているやけどのことですが、比較的浅い場合を浅達性Ⅱ度熱傷、真皮でも深い位置まで熱傷が及んでいると深達性Ⅱ度熱傷と診断されます。どちらも水疱が発生し、それが破れるとびらん状の皮膚がみられるようになるのですが、水疱の底というのは浅達性が紅色なのに対し、深達性は白色となっています。また痛みがもっとも強くみられるのが浅達性Ⅱ度熱傷で、深達性Ⅱ度熱傷以上のやけどは瘢痕が残りやすくなります。Ⅲ度熱傷は、熱傷が皮下組織にまで達した状態で、皮膚組織は壊死し、表面は硬く乾燥、痛みを感じることもありません。

治療に関しても症状の軽重によって異なりますが、Ⅰ度熱傷はステロイド外用薬の塗布が中心です。Ⅱ度熱傷であれば、感染予防のために患部を洗浄し、ワセリンなどの外用薬を塗布していきます。Ⅲ度熱傷では、壊死組織を速やかに除去し、植皮手術を行っていきます。このほか、症状の程度に関係なく、感染対策として抗菌薬などを使用することがあります。